インターネット上での著作権侵害と弁護士の活用

弁護士

著作権についての裁判事例はまだ少ない

現在では著作権ということばそのものは広く世間に浸透してきた状況ですが、実際にその内容となると明確に理解している人は少ないといえます。
著作権についての法令の規定が整備されるようになったこと自体が比較的新しく、いまだ裁判所の判例や行政実例などの蓄積は十分ではありません。

政府の文化審議会著作権分科会やその他学界での議論は活発ですが、議論そのものが法的な意義を持つわけではありませんので、著作権侵害に遭遇した場合には、裁判所に訴えて判決を勝ち取る以外にはなかなか対応策がないというのも実情です。

そこで法律の専門家として依頼人に代わって法廷に立つことができる弁護士の活用が大いに求められる分野といえます。

法律上の要件を満たしているのかどうかは慎重に判断する必要がある

単に著作権侵害が疑われるとはいっても、それが本当に法律上の要件を満たしているのかどうかは慎重に判断しなければなりません。

著作権の対象となるのは著作物ということになりますが、この著作物の定義は法律によれば思想や感情を創作的に表現したもので、なおかつそれが文芸・学術・美術または音楽のカテゴリーに属している場合とされています。

したがって歌謡曲の歌詞や小説・マンガ・アニメーションなどの表現が無断で使用されたものであれば、それは著作権侵害として認められることになります。

しかし誰かが外から見える場所に建っている自宅の建物の写真を撮影してブログなどに無許可でアップロードしたことをもって、同様に違反行為と言い得るかは疑問が残るところで、この場合はプライバシー権などの別の権利を主張する余地はあるにしても、少なくとも著作物を盾にして法的に争うのは難しい面があります。

事実関係の内容だけが一致している程度では保護の対象にはならない

また単に事実を指摘しただけの表現やありふれた言葉の羅列にとどまる表現なども、思想または感情の表現とはいえず保護の対象にはなりません。

たとえば何月何日に某所でイベントが開催されたといった記事をブログで発信したところ、別の人が同じような記事を書いたので訴えたいという場合、原文によほど創作性にあふれた特徴的な表現があればともかく、事実関係の内容だけが一致している程度では保護の対象にはならない可能性があります。

歌謡曲の場合も歌詞やメロディは保護されるとしても、タイトルだけでは認められないというのが一般的な解釈です。
曲のタイトルは比較的短くありふれた言葉を羅列したものに過ぎない場合が多いため、単にタイトルが後発の別の曲と重なっただけ、あるいは曲のタイトルをブログや印刷物に記載しただけというのでは、訴えたところで敗訴になってしまう確率が高いといえます。
・・・著作権侵害事例

ところが例外的に電話帳などのデータベースでは著作権侵害が認められることがあります。
これはデータベースは単なる事実の羅列ではなく、見やすく使いやすく並べる部分に創作性があらわれているためです。

著作権違反は専門家でないと判断が非常に難しい

このように素人判断では法律違反とみられる事項が実は法律の要件を満たしていないこともあれば、その逆の場合もあるのが著作権の世界です。
訴えるだけの価値があるかどうかは、いったん弁護士の法律相談を受けた上で判断するのが妥当です。

裁判となれば手間と時間がかかりますし、弁護士への依頼にも最初に着手金、勝訴判決などで問題が解決すれば報酬金その他の費用を支払う必要が生じます。

もちろん裁判所に対する訴訟だけが対応策ということではありません。
相手との話し合い解決という示談による方法や、インターネットの場合はプロバイダを通じた削除要請などの手段も使えます。
このように問題解決の手段を探るという意味で法律相談を利用することも有効です。

著作権侵害に対して弁護士に依頼をした場合に具体的に行われる対策の手順

よくあるインターネット上におけける著作権侵害に対して、弁護士に依頼をした場合に具体的に行われる対策の手順ですが、まずはそれが本当に法律に違反する行為なのか、違反があるとすればとのような条文の規定が根拠となるのかを検討します。

著作権とはいっても実はその中身はいろいろな権利に分かれています。
たとえば他人に無断でコピーするのは複製権を侵害したことになりますし、インターネットで流布させれば公衆送信権、原作の表現を勝手に変更すれば翻案権の侵害になります。

この段階で法的に問題があることが確実であれば、次に相手のホームページやブログが掲載されているサーバを運営するプロバイダを特定します。
プロバイダがわかればプロバイダ責任制限法という法律にもとづき、該当するホームページやブログの公開を停止するように要求することができます。

プロバイダに発信者情報の開示を求めて開示された相手の住所氏名などをもとにして裁判所に訴える

プロバイダが迅速的確な措置を実行した場合には、問題は解決したとして済ませるのか、それともあくまでも無断でアップロードした相手に損害賠償などを求めるのか、ここで選択肢が分かれます。

プロバイダが適切な措置をしなかった場合も同様ですが、先に進むのであれば、プロバイダに発信者情報の開示を求めて、開示された相手の住所氏名などをもとにして裁判所に訴えを提起します。

ここでは具体的に著作権侵害をしている証拠とともに、相手に対する損害賠償を求める流れとなりますが、実際の裁判は法律のプロである弁護士が代理人として進めますので、あとは随時の打ち合わせや報告などの機会に戦略を確認します。

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